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不動産登記は自分でできる! 登記申請のルールや自分するときの注意点を解説

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不動産を購入したとき、売却したとき、相続したとき、取り壊したときなどに不動産登記の手続が必要になります。登記申請は司法書士に依頼して対応するのが一般的ですが、「不動産登記を自分でやれば、費用が少なくて済むのではないか」と考える方もいることでしょう。

当記事では不動産登記についての基本的なルールを説明し、“所有者自身が登記をすること”に焦点を当てて、注意点等を解説していきます。

 

不動産登記は自分でできる

まずいえるのは、「不動産登記は自分でもできる」ということです。むしろ不動産登記について規律する不動産登記法では、自分で行うことを原則としています。

 

(建物の表題登記の申請)
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 不動産登記法第47条第1項

 

建物の滅失の登記、所有権保存の登記なども同様です。これらの条文は「不動産登記は、専門家ではなく自分で行わないといけない」と示す趣旨ではありませんが、所有者が自ら登記を行うことに、法的な問題がないことが読み取れます。

 

自分で登記をすれば依頼費用は不要

多くの場合、不動産登記は登記のプロである司法書士に依頼して行います。しかし、その場面でネックになるのは司法書士への依頼費用ではないでしょうか。相場としては、少なくとも数万円ほどが登記申請の依頼にかかります。

もし、自分で登記をするとなれば、その依頼費用が不要になります。これは大きなメリットといえるでしょう。

 

契約上自分で登記できないことがある

法律上、不動産登記を自分で行うことに問題はありません。

しかし、不動産を購入する場面など、取引の契約を交わす場面でその原則が通じるとは限りません。

例えば不動産取引において銀行が関与するとき、多くの場合は登記申請を司法書士に依頼する前提で話が進みます。そして「登記は自分でする予定です」などと伝えると、難色を示されることでしょう。受け入れてくれるケースもあれば、断られるケースもあります。

そのとき、「不動産登記法上は自分でもできる!」と伝えても結果は変わらないでしょう。物件の価格を契約当事者が定められるのと同じように、司法書士による登記申請が取引条件になっている場合、不動産を売ってくれなくなります。

 

自分で不動産登記をするときの注意点

自分で不動産登記をすることでコストカットの効果が期待できます。しかし、リスクも伴います。次の点には注意しましょう。

  • 手続でミスが起こりやすい
  • 登録免許税や必要書類の取得費用の負担は必要
  • 期限に間に合わせること
  • 権利の所在をめぐるトラブル発生のリスク

各注意点について説明します。

 

手続でミスが起こりやすい

不動産登記の手続が完了するまでに必要な作業はたくさんあり、その過程でミスが発生する可能性があります。

まず対応するのは「必要書類の準備」です。売買契約書、登記済権利証、売主の印鑑証明書と買主の住民票、固定資産評価証明書などを揃えます。相続に伴う登記申請の場合は、被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書や遺言書なども必要です。また、「登録免許税の計算と納付」も必要です。登記対象の物件についての課税標準額と税率を調べ、金額を算出。その費用を確保します。さらに「登記申請書の作成」も当然必要です。専用の用紙を入手し、必要事項を漏れなく、正確に記入していきます。

準備が完了すれば、「登記申請書と添付書類を法務局に提出」します。窓口申請だけでなく、郵送申請やオンライン申請も可能です。なお、どの法務局でも申請ができるわけではなく、対象物件のある地域の法務局にて手続を行わないといけません。

その他、登記の完了後、登記識別情報通知を受け取るなど、対応すべきことは多岐にわたります。慣れない作業を一つひとつ着実にこなさないといけません。

 

登録免許税や必要書類の取得費用の負担は必要

不動産登記を自分でするにしても、一切の費用が不要になるわけではありません。少なくとも、「登録免許税」と「必要書類の取得費用」の負担は必要です。

対象物件の課税標準額にもよりますが、登録免許税には数十万円はかかると見ておきましょう。

必要書類の取得費用は、個別に見ると大きな金額ではありません。戸籍謄本の取得なら1通450円。住民票は自治体によりますが1通300円から400円程度。印鑑証明書や固定資産評価証明書、登記簿謄本も同程度の金額です。ただ、数が増えてくるとそれなりの費用にはなってきます。

 

期限に間に合わせること

不動産登記には、期限が定められています。上に示した不動産登記法第47条第1項でも、「・・・建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と規定してあります。

その他、土地の表題登記、地目または地積の変更登記、土地の滅失登記、建物の表題部の変更登記、建物の滅失登記などの申請でも同様の規定が置かれています。

「1ヶ月以内の登記申請」というルールは、プロ相手でも、一般の方相手でも変わりなく適用されます。期限に間に合わなかった場合、過料が課せられる可能性がありますので注意しましょう。

なお、相続により不動産を取得した場合については、2023年時点では期限の定めが置かれていません。しかしながら、法改正の影響を受け、2024年4月1日からは「相続発生から3年以内」の登記申請が義務となります。

 

権利の所在をめぐるトラブル発生のリスク

未登記のまま放置すること、あるいはミスにより適切に名義変更等ができていないことには、上記過料制裁のリスクのほか、権利の所在をめぐるトラブル発生のリスクがあります。

登記簿に、自身が所有者であることが明示されていないと、自らの所有権を主張するのが難しくなります。最悪の場合、不動産が別の人物に取られてしまうという事態も起こり得ます。

民法上も、第三者に対して不動産に係る権利を主張するには、登記が必要と規定されています。

 

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

引用:e-Gov法令検索 民法第177条

確実に不動産を自分のものとし、その権利を守るためには、適切に不動産登記ができている必要があります。不動産1件で数千万円もの価値を持つことも珍しくありません。その重大な財産を守るための手続が登記申請なのです。

 

自分でするリスクも考慮して司法書士の利用を検討

「不動産登記を自分でやろうか、それとも司法書士に依頼しようか」とお悩みの方は、上記の内容を総合的に評価して検討しましょう。

登記にかかる費用をとにかく少なくしたい、ミスなく登記申請できる自信がある、という方は自分自身で対応することも選択肢に入ってきます。

一方、不動産を失うリスクを極力避けたい、自分でする登記申請には不安がある、という方は一度司法書士に相談することをおすすめします。