司法書士・土地家屋調査士 田中大介事務所 > 記事コンテンツ > 相続登記手続きの流れ|必要書類や費用、手続きの注意点も併せて解説
被相続人が不動産を所有していた場合、当該不動産も相続対象となり、被相続人から相続人、または受遺者へと所有者名義が移ります。このときの不動産の名義変更は、「相続登記」として行います。
当記事ではこの相続登記手続きを流れに沿って説明し、必要書類や費用、相続人等が注意すべき点についても併せて解説していきます。
相続登記をするまでの流れを簡単にまとめると、次のように示すことができます。
各手続きの詳細を以下で説明します。
被相続人が所有していた不動産について、調査を行います。不動産の状態、権利関係などをチェックするのです。
被相続人の自宅に「登記事項証明書」があれば物件の詳細を確認できますが、まずはどんな不動産を持っていたのかをはっきりさせないといけません。
この点、大きな手掛かりとなるのが「固定資産税課税明細書」です。固定資産税課税明細書には、課税対象者が所有している不動産が記載されています。同書の内容を確認することで、被相続人がどんな土地や建物を持っていたのかが把握できます。
課税明細書も見つからない場合、市区町村役場で「名寄帳」を請求します。当該市区町村内に限られますが、被相続人が所有している不動産のリストを確認できます。
各物件の詳細は、登記事項証明書で確認します。法務局で発行を請求しましょう。登記事項証明書を手に入れたら、「地番」「家屋番号」「地目」「所有者」等の記載内容を確認します。課税明細書等との記載とずれがないかどうか、また、被相続人が登記名義人になっているかどうかも調べましょう。
誰が不動産を取得するのかを定めます。遺言書が作成されており、「〇〇に土地を譲る」などと記載されていれば、原則としてその通りに当該人物が指定の財産を受け取ることになります。
※受遺者はこれを放棄することが可能。相続人全員の同意で、遺言書に従わず遺産分割することも可能。
遺言書で指定されていないときは、遺産分割協議にて取得者を決めます。共同相続人がいる状況において不動産の分割方法を定めない場合、共有することになります。しかし、不動産の共有は推奨されていません。権利関係が複雑になりますし、売却等の処分をするのも大変になるからです。そのため共有であるべき事情がない限り、誰が1人に権利を集約すべきといえます。
不動産の所有者が決まれば、当該人物が、相続登記に必要な書類を準備します。
必要書類 |
各書類についての説明 |
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登記申請書 |
法務局のWebサイトからダウンロード可能。ダウンロード後、必要事項を記入して作成。 |
登記事項証明書 |
土地や建物の情報を申請書に記入するため準備。申請書には、登記事項証明書に記載されている情報通りに記入していく。 財産調査で手に入れているなら別途取得は不要。 |
遺言書または 遺産分割協議書 |
自らが不動産の所有者であることを示すために準備。 遺言内容に従い取得したときは遺言書、遺産分割協議により取得したときは遺産分割協議書を準備する。 なお、自筆証書遺言(遺言者の自書により作成された遺言書)の場合は、家庭裁判所の検認済証明書も必要。 遺産分割協議書については、相続人全員の押印と印鑑証明書が必要。 ※相続人が1人のときはいずれの書類も不要。 |
被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本等 |
法定相続人の調査は、被相続人の死亡から出生までの、一連の戸籍謄本等を確認することで行う。この戸籍謄本等により、自らが相続人であることを示すことができる。 |
被相続人の住民票の除票 |
登記簿上の住所、本籍地の記載があるものを準備。 |
固定資産評価証明書 |
相続登記申請時には登録免許税が必要。その金額を計算するために準備する。 |
相続人の |
相続人全員の戸籍謄本と、新たに所有者となる人物の住民票を準備する。 |
状況によりその他準備が必要になる書類があります。詳細は司法書士に相談して、漏れのないように準備を進めましょう。
必要書類が揃えば、法務局にて登記申請を行います。申請先は、登記対象である不動産の住所地を管轄する法務局です。登記申請書、そして添付書類一式を提出し、申請します。
登記申請の際、登録免許税の納付が必要です。相続により取得して所有権を移転する場合の金額は、次の計算式に従い算出します。
登録免許税の金額 = 固定資産税評価額×1,000分の4
※1,000円未満は切り捨て
その金額分の収入印紙を購入して、申請書に貼付してから提出します。
なお、費用としてはこの登録免許税のほか、司法書士への依頼費用も発生します。依頼は義務ではないものの、登記申請は司法書士に頼むのが一般的です。自分ですることもできますが、不動産という大きな財産の権利に関わる手続きですので、ミスは絶対に避けなくてはなりません。慣れない作業に不安を感じる方も多く、プロに依頼するのが通例です。
司法書士の依頼費用は、依頼先により異なります。そのため詳細はアポを取った司法書士に聞く必要があります。相場としては、数万円~十数万円程度です。
「サポートの範囲」が金額を大きく左右します。相続登記申請のみの代行であれば、数万円で済むケースが多いです。一方、相続人の調査から物件の調査なども依頼すると、10万円ほどが必要になってきます。範囲が広がるほど費用も増えますが、その分依頼主の負担は軽減され、ミスが起こるリスクも小さくすることができます。
相続登記を行うとき、以下の点には留意しましょう。
遺言書が作成されていないかどうか、遺産分割協議の前にしっかりと調査しておきましょう。
「自宅ですぐに発見できなかった」といって、すぐに「遺言書は作成されていなかった」と考えてはいけません。遺言書が見つからないよう、隠れた場所に大事に保管している可能性があります。また、法務局や公証役場に保管されている可能性もあります。
遺言書には、分割方法の指定、受遺者の指定がされているかもしれません。これを見逃して遺産分割協議をしてしまうと、後々協議のやり直しが必要になったり、相続人や受遺者との間で揉めてしまったり、といった問題が起こり得ます。
執筆時点(2023年時点)においては、相続登記は義務とされていません。そのため相続で不動産を取得した方がそのまま登記をせずに放置しても、法律上のペナルティは科されません。
ただ、相続登記をせず放置していると、その後売却をしたくなっても売り手がつきにくくなります。相続により取得した事実を知らない第三者からすれば、当該物件の所有者であることがわからないからです。同様に、賃貸に出したり建て直したりするとき、担保に出すときなど、困る場面がいつかやってきます。
また、登記をしないまま所有者がなくなり相続が発生すると、より問題は複雑になります。実際、先代のまま名義が残されているケースもあり、このとき相続登記にかかる手間はより大きくなってしまいます。
現状、相続登記が法的義務にはなっていないものの、法改正により、2024年4月1日からは相続登記が法律で義務化されることが決まっています。正当な理由なく相続登記を行わない場合、10万円以下の過料に処すといったペナルティも予定されています。
「相続後3年以内の相続登記」を改正法は求めていますが、できるだけ早めに対応することが推奨されます。